掲載:『つなぐ』寝屋川市民たすけあいの会,第229号,2016年12月.

実践の糧」vol. 32

室田信一(むろた しんいち)

社会の課題を解決するために、コミュニティ・オーガナイザーは住民に「その気」になってもらうように働きかける。その結果、課題は解決の方向に進むが、反面、住民に過度な負荷をかけてしまう危険性があるというジレンマについて前号で述べた。

非営利セクターの国際比較研究をおこなったラルフ・クレイマーは民間非営利セクターの役割を先駆者(vanguard)、価値管理者(value guardian/volunteer)、サービス供給者(service provider)、アドボカシー(improver and advocacy)の4つに整理している。この研究は今から35年前の研究で、現在の政府と非営利団体の関係は、当時のそれと大きく異なっているということができる。

アメリカでいうと、1980年代まで政府による社会保障費が非営利団体によって提供される福祉関係サービスの予算を上回ることはなかった。つまり、非営利団体は政府が提供していないサービスを先駆的に提供していたという意味において、クレイマーの言うところの「先駆者」としての役割を果たしていた。もしくは、政府のサービスでは不足する部分を補足する「価値管理者」としての役割が主流であった。さらに付け加えると、政府の政策が不十分であれば政府に対して要求する「アドボカシー」としての役割を担っていた。

しかし、1980年代を契機にそれは変わった。アメリカに限らず先進諸国では増幅する国家の社会保障費を効率的に運用するために非営利団体にそれらを委託する傾向が強くなった。政府の代わりにサービスを請け負う「サービス供給者」としての役割が主流になった。増幅する福祉ニーズを満たすために、政府は安い費用でサービスを外部委託し、それらを受託した非営利団体は事業の規模を拡大してきた。

ところが近年の政府の方針は、非営利団体よりもむしろ住民ボランティアによる互助活動によって拡大する福祉ニーズを満たすという政策へと転換してきている。そうした流れの中で、住民による互助活動を促進するために非営利団体に各種の「コーディネーター」を配置する政策が推進されている。コーディネーターがいることで、地域の住民活動が円滑に推進されるという側面はあるだろう。しかし、福祉ニーズを満たすための政策の一環として住民を「その気」にさせて互助活動に動員するというのは、結果的に住民に過度な負担を押し付けていることになる。

「担い手の高齢化」や「担い手不足」といった言葉を地域の活動でよく耳にする。しかし、ボランティア活動する人たちが高齢化して何がいけないのだろうか。高齢化しても活動したい人はしたらいいし、できなくなればやめればいい。担い手が不足するというのは、誰にとって不足なのだろうか。政府によって押し付けられた「目標」を達成するために不足するということではないだろうか。

非営利団体やボランティアの強みは「先駆者」や「価値管理者」「アドボカシー」としての役割である。「サービス供給者」に押し込められている現状について、改めて考え直す時期が来ているのではないだろうか。

※掲載原稿と若干変更する場合があります。

実践の糧