シリーズ『実践の糧』vol. 16

掲載:『つなぐ』寝屋川市民たすけあいの会,第213号,2014年4月.

実践の糧」vol. 16

室田信一(むろた しんいち)


私は学生の時にバスケットボールとラグビーをやっていた。組織が1つのチームとして機能する感覚というのは、その時の経験から培われているように思う。それは、部長や副部長というような役員体制の話ではなく、まさに試合が展開する最中にチームプレーが成り立つ時の話である。

バスケットボールにしてもラグビーにしても、相手のディフェンスをくずし、得点を挙げるという具体的な目標をチームメンバーの中で共有している。そのためには一人で相手のディフェンスに立ち向かっていってもまったく機能しない。チームメンバーと協力することが前提となる。しかし、試合中常に戦略会議をしているわけにはいかない。試合が進行する中で「あ・うん」の呼吸でチームワークを発揮することが求められる。

たとえば、バスケットボールの試合で私がボールをドリブルしながら相手のコートに攻め込んでいる時、二人は左右を並走し、一人は相手のコート奥深くにまで攻め込み、一人は後ろで控えているというようなフォーメーションを組むことで相手のディフェンスをくずしやすくなる。そして、そのチームメートたちにパスをまわしながら相手を攻略するためには、目前のゴールや相手ディフェンスを把握することと同時に、チームメートがどのような軌道でコートの中を移動するのかということを把握する必要がある。つまり、仲間が共通の目的に向かってどのように動いているのかという力動をつかまなければならない。

そのためには、仲間と協力してゴールを挙げるという共通のイメージをもつことが求められるし、仲間と信頼関係を構築することが求められる。自分がドリブルで右に切り込んだら、仲間は左に切り替えるだろう、シュートを打つ瞬間はゴールの下に走り込むだろう、というような動的な共通認識が確立した時にチームは機能する。

コミュニティの中で実践を進める時に同様の感覚を得ることがある。たとえば、会議で自分がある発言をすることで、仲間がそれに対して適切なフォローをしてくれるという期待や、自分が司会を務めている時に仲間が的確な発言をしてくれるのではないかという期待をもちながら議論を進めることがある。会議をとおして獲得したい目標があり、その目標のためにチームが信頼関係を構築し、力を結集するという意味では、同様のプロセスが存在する。もしくは、資料のホチキス留めのような単純作業をとおして、チームが一体感を得ることがある。身体的な作業の方が、動的なプロセスが明確なため、そのような感覚は得やすいかもしれない。

逆に言うと、そのようなチームワークが意識されていない限り、組織として目標を達成することは難しいだろう。一人のスター選手がいても、チームの中で機能しない限り試合に勝てないことはそれを象徴している。

※掲載原稿と若干変更する場合があります。

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