掲載:『つなぐ』寝屋川市民たすけあいの会,第215号,2014年8月.
「実践の糧」vol. 18
室田信一(むろた しんいち)
2014年5月より東京都某市の社会福祉協議会で地域福祉活動計画の推進委員会の委員長の役務に就くことになった。あまり一般化したくはないが、区市町村の社協が開催する地域福祉活動計画に関する会議は形式的なものが少なくない。委員会の会議は、少ない地域で年間2〜3回、多い地域で年間9〜10回程度開催されるが、基本的には事務局(社協の職員)が準備を進め、地域の関係諸団体を代表して選出された委員がそれぞれの立場から発言をして、それらの意見を事務局がまとめる。結果的には、事務局が用意した筋書きに従って会議が進行していくことになる。
そのような形式的な会議に慣れてしまうと、いつしか、事務局側も、参加する委員側も会議とはそのようなものだと思い込んでしまう。社協は伝統的に「住民主体の原則」を大切にしてきているはずだが、それらの会議を拝見する限りは、原則とは裏腹に、住民を客体化することが恒常化しているように感じてしまう。
しかし、そのことは、社協職員が住民主体の原則を信じていないこととは違う。単純に、住民主体で会議を進める方法が社協の中に浸透していないだけなのだと思う。2000年の社会福祉法改正を契機に全国で地域福祉計画の策定が進められた。多くの研究者が計画策定の進め方を研究し、現場を指導し、草の根の民主的な地域改革が推進されるものと思われていた。ところが、ふたを開けてみれば多くの自治体や社協の会議では形式的な会議が繰り返され、事務局が用意した筋書きどおりの計画が委員によって承認される形態が一般的になってしまっているように思う。
そこで、東京都某市の社協の地域福祉活動計画推進会議で私が取り組んだことは、まず会議の司会者と記録係を誰にするか、そして会のルール(意思決定の方法など)をどのように設定するかについて話し合って決めてもらうことであった。通常、このような会議では委員長が司会を務め、話し合う内容はすべて事務局が準備することになっている。しかし、会議の進行方法について参加者の意見を求めたことにより、その委員会が予定調和的な会議ではなく、委員が発言した内容が会議の進行に具体的に反映されるものであることを印象づけた。
第一回目の会議では多くの委員が戸惑っていた。なぜなら、そのような形態の会議進行に慣れていないからである。事務局も同様に戸惑っていた。どのように進行すればいいのか不安で、早くいつもの進め方に戻したいという思いが随所に感じられた。そこを我慢して、辛抱強く会議を進めてみた。すると、通常の会議では見ることができない住民による主体的な発言が飛び出し始めたのである。
詳しくは次号に続く。
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