福祉マネジメント再考

日本に帰ってきて、民営化の流れがあまりにも強いことに驚かされる。これは福祉のフィールドに限った話ではないが、福祉のフィールドでは世間があまり注目していないうちに民営化がどんどん進んでいる。福祉における民営化というと、とかくNPOが挙げられることが多いが、実際には株式会社等の営利会社がその殆どである。居酒屋で有名な「和民」が福祉業界に進出したことは有名だと思うが、福祉の業界で利益を上げるということはなかなか容易ではないんじゃないかと思う。日本の社会もこれからは、貧富の差が広がり、福祉サービスにも質の高低が出てくると思われるが、まだまだ至上主義的要素は薄く、家族では面倒見切れなくなった個人(認知症高齢者や障害者など)に対して、福祉サービスを利用するというように、あくまでもインフォーマル・ケアを補うものとして捉えられている。
そういった中、これから福祉のビジネスを成り立たせるためには、特に裕福層に対して質の高いサービスを提供することが経営者の考えるところと思われる。1970年代から続いてきた「措置型」の福祉国家的福祉では、財産の有無に関わらず、国の保障の下、「平均的」な事業を行うことで福祉ニーズを埋めてきたが、近年では社会福祉基礎構造改革により、新たにマネジメント能力が求められるようになってきている。
以上のような流れの中、最近ではコミュニティビジネスと言う考え方も注目を集めている。北欧ではソーシャルエンタープライズなどと呼ばれているようだが、これは、地域密着型の社会サービス提供体で、「社会的な目的を持ち、民間の価値観の上に存在」する。何だか、ややこしい話だが、これが何でややこしいかと言うと、我々の多くは「政府」「企業」「民間」といった縦割りの構造が骨までしみこんでしまって、その枠組み以外では物事が考えられなくなってしまっているからだと思う。結局、コミュニティビジネスって言うのは小地域で需要と供給をマッチする仕組みづくりということだと思う。小地域で経営を行うときに、極端な営利目的では経営は成り立たないわけで、そこには地域における人間関係や、環境に対する配慮など、モンスタービジネスが行ってきたような利己的かつ極端な営利目的の経営は成功しないと言うことである。なかなかそう単純なものであるとは思えないけどね。
必要原則に基づいた、コミュニティビジネス的なサービス提供は需要と供給のバランスが整っている間はいいが、貧富の格差が広がることで、必要が満たされない事例が増えることが予測される。そうなったときに、コミュニティビジネスはどういった動きに出るのだろうか。
・「公益性」という価値観の下、あえて貧困層のニーズを補うことで経営を成り立たせることができるのか。
・「社会正義の専門性」を持って、経営困難であれ、社会の不平等に対して働きかけるのか?それは民間の価値観から成り立つのか?
・事業を進める上での「事業団体・組織の民主制」はどのように保たれるのか?
多くのコミュニティビジネスは、発起人のユートピア思想を伴ったエリート的なエゴによって成り立っていることが多い。そんでもって、そのエゴのおかげで、社会変革を導くような一大貧困層救済プロジェクトが成り立つことも大いにありえるし、長期に渡りコミュニティの安定を築くような事業に発展してきた例もある。しかし、1人のカリスマができることは限られているので、大切なことは「ビジョン」の共有であり、事業運営の方向性を振り返り、状況に応じて変化することができるメカニズムであると思われる。
それって、結局COの理念なんじゃないかなぁ。コミュニティビジネスって言う名前ばかりが先行して、気軽に始められるビジネスみたいにNPOや1円企業がじゃんじゃか生まれてるけど、その中にどこまでCOの理念が入っているのだろうか。どうすれば、COの理念がコミュニティビジネスに浸透するかを真剣に考えなくてはいけないなぁ。ずうずうしいかなぁ。

CO道

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