無意識の意識化

久しぶりに書いています。このネタは、ずっと前から書こうと思っていたんだけど、やっと文字にすることができて、うれしい所存であります。
「無意識の意識化」というタイトルにしたけど、基本的にはアプローチの話です。コミュニティという空間は、多様な考えを持った人が、意思の決定を行ったり、一定のルールを設けたりするわけだけど、それが何よりも難しいところであり、COの最もダイナミックなところだと思う。哲学に始まり、さまざまな学問領域がこの不特定多数における意思決定や住民参加について思考を巡らせてきているけど、COもその1つなわけだ。しかもかなり現実的な視点と要素を含んだ方法がCOの特徴といえるだろう。
そんな中、無意識の意識化について考え始めるきっかけになったのは公衆便所におけるある変化からなんだな。残念ながら、女性がその変化に気づくことはないかもしれない。というのもこれは男性用の便所の話だからである。しかし、僕も女性用の便所に入ったことがないので、ひょっとしたら僕の知らないところで女性便所にもさまざまな変化が起こっているのかもしれない。どんな変化かというと、「小」専用便器における変化である。「小便器」という言葉があるのか知らないけど、ここでは「小便器」と呼ぶことにする。小便器における長年の問題点は、「的外れ」である。つまり、男性が立って「小」をする際に、目測を誤って、小便を小便器の外に垂らしてしまうことがある。これ以上書くと、何のブログなのだかわからなくなるので、あまり具体的なことは書かないが、とにかくさまざまな理由から小便器周辺は小便で汚れてしまいがちなのだ。もちろん、とっても不衛生ですね。不衛生だから、用をたすときにあまり便器に近づこうとしない、するとますます垂れ流しが増え、ますます便器周辺が汚れる。負の連鎖なんです。
すると、便器の周辺には、次のような張り紙が貼られることが多い。「きれいに使いましょう」「便器はきれいに」「一歩前へ」など。しまいには「的外れ禁止」などという張り紙まである。「的外れ禁止」といわれても、どうしても無意識的に的外れしてしまうことが多く、「禁止」することはあまり効果がない。ここで重要なことは、的外れを意識的に「禁止」させることではなく、「的に当てる」という行為を無意識的に導くことなんだと思う。
そこで最近よく見かけるようになったアイデアは小便器の真ん中に的をつけた便器である。どのような的かというと、「蠅のマーク」や「丸」などシンプルなものもある。最近見た中でもっともよくできた的は、矢を射る的のように二重丸なんだけど、なんと小便を当て続けることで変色する仕組みになっている。これらの的がどのように機能するかというと、小便器に向かって用をたすという行為の無意識の部分に働きかけ、結果的に便器をきれいに使う効果を生み出す。誰も便所を汚く使おうとは思っていないわけで、できることならきれいに使いたい、その意思をうまく側面からサポートするような仕組みが必要なのである。つまり、人の無意識をうまく引き出すようなデザインがカギのようだ。
似たような仕組みでゴミ箱がある。以前よく見かける風景に「ゴミのポイ捨て禁止」という看板の周りにゴミが散らかっていたり、ひどいものになるとその看板がゴミ捨てスポットとなってしまっていたりする。というのも「ゴミのポイ捨て禁止」という看板は最もゴミが捨てられがちな場所に立てられるもので、無意識に人のゴミ捨て欲を引き出すような環境にあると考えられる。そこに、意識的に「ゴミ捨ててはいけません!」と働きかけてもなかなかうまく機能しないものである。そこで発想を逆転させ、特定の場所にゴミを捨てたくなるような仕組みにすればいいのである。ゴミを捨てたくなるような場所にゴミ箱を設置する。しかも、自然と分別し、ちゃんとはこの中にゴミを納めるような作りにする。そんなゴミ箱が最近増えているように思います。雑誌、新聞用のゴミ箱には横長の穴が、びん、缶ゴミ用には丸穴があいている。しかも、ゴミ箱の上にゴミを置けないように上部を斜めに設計する。そんなゴミ箱が増えてきたように思います。
これは、人の無意識に対して働きかけるようなデザインが増えた成果だと思います。人の意識に対して規律のように働きかけるのではなく、人が自然と特定のルールにのっとって行動するようなデザイン、それが重要なわけだ。
ここでコミュニティの話に戻るけど、コミュニティの中で合意を形成する上でも同様の仕組みが必要だと思う。人が自然と気持ちよく合意を形成できるように、そんな枠組みをデザインすることが求められる。もちろん、人がそのデザインを好まなかったら、全く機能しない。誰もゴミを捨てないゴミ箱のようなものである。コミュニティオーガナイザーの役割は、そうした人が自然と、有機的に合意を形成できるような仕組みを提示すること。これがなかなか難しいんだけどね。

CO道

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