日本というフィールド

僕はニューヨークに移り住んだ時19歳だった。その時、心に命じていたことは「とにかくいろいろ経験してやろう!」ということだった。それは、僕にとって新しい世界であるニューヨークをフィールドとしてとらえ、とにかくそのフィールドで発見できることはすべて発見し、吸収できることはすべて吸収しようと思っていたからだ。NYでの8年間は大変実りの大きなものであったし、ニューヨークというフィールドを十分使いこなしたといえると思う。もちろんまだまだやり残したことはたくさんあるが。
さて、それでは2005年に日本に帰ってきたときはどうだろう。ニューヨークに行った時とはSlightly Differentであったといえよう。それは当然日本という国を知っていたわけだし、19歳と28歳では社会的に置かれた状況も違う(特に日本では)。そこで、これまでNYで学んできたものを活かしながらも、日本では日本独自のものを学ぼうと僕は考えた。
僕はコミュニティをフィールドとし、コミュニティの中における人々の有機的な関係を形成することをその専門としてきた。コミュニティといっても様々なものがある。ドイツの社会学者テンニースゲマインシャフトとゲゼルシャフトという二つの概念で共同体の近代化を説明した。それはつまり、地縁や血族による結びつきが強い共同体としてのコミュニティから、近代社会としての市民社会という共同体への変化である。ところが、情報化社会への変化と共に新たな共同体概念が必要とされているという見方がある。つまり、オンライン・コミュニティなど新たなコミュニティによる新たなコミュニケーションの台頭で、共同体の概念も変わりつつあるという考え方だ。なるほど。
確かにそうかもしれない。実際に情報化社会において人々の生活スタイルが変わりつつあるし、それに準じてコミュニティの在り方も変わりつつあるだろう。そして、これからコミュニティを考える際に情報化社会という枠組みで考えない限り、見当違いなもの、又は重要な要素を欠いたものになってしまう。
それでは今日における「日本というフィールド」をとらえるときに果たして情報化社会という枠組みは有効であろうか。残念ながら答えはNOであろう。
どちらかというと日本に存在する独自のコミュニティに注目することが有効であるように思う。
コミュニケーションの方法は変わってきていても、基本的に人々が共同体を形成するメカニズムはそれほど変わってきていない。地域という物理的な空間の中に人が住み、人が顔を合わせているからであり、そうしたコミュニケーションがなくなることはない。インターネットが普及し、多くの地域のオーガナイザーたちがメーリングリストやホームページを駆使して活動を行っている。それ自体は、ツールとして有効であるが、おそらく多くのオーガナイザーたちは、それらのツールの限界に気付いていると思う。メールを何百人に出すよりも、20人が物理的に集まるミーティングを開いたほうがよっぽどポジティブなコミュニケーションを持つことができる。ここでいうところのポジティブとは、メンバーのコミットメントを得るというプロセスや、リーダーシップを形成するプロセスなどCOに欠かせない要素が、物理的なミーティングを通して形成されるということだ。
まぁ、話は長くなったけど、日本に帰ってきて学んだことは、日本独自の村社会によるコミュニティ形成である。たとえインターネット社会で、新たなコミュニケーション方法を考察しなくてはと言っていても、その根底には「日本人」によって形成される村社会という独自の社会が成り立っている。限りなくゲマインシャフトに近いものだ。この現実を見つめて、この中で人々がどのようにコミュニティを形成するのか、しっかり学ぶ必要がある。
何でこんなことを書いたかというと、情報化社会の高揚とともに新たな時代のコミュニティ形成という考え方が氾濫しているように思うからだ。それ自体重要なことだし、科学技術の進歩とともに人間の生活様式や価値形成は変化し続けることは当然だからである。ここで重要なことは、よりリアルに考えることが大切ということ。ネット社会における理想的なコミュニティというビジョンに引っ張られて、いつの間にか人間一人ひとりのことが見えなくなってしまい、自分の掲げる理想をあてはめるような考え方が目立つ。ビジョンを提示することは大切である。同様に、そのビジョンをどのようにしてより多くの人と共有しながら、ああだこうだ言ってつくり変えていく、そんな役目を担う人をビジョンに組み込ことが重要である。ワンクリックで様々な物事ができてしまうせいでコミュニティもワンクリックやクリックの集合体で成り立っていると勘違いしてしまいがちだが、よーく現実を見てみよう。現実はもっと複雑であり洗練されたものである。

CO道

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