掲載:『つなぐ』寝屋川市民たすけあいの会,第286号,2026年6月.
「実践の糧」vol. 86
室田信一(むろた しんいち)
私が中学生の頃、友達の間で横山光輝先生の漫画「三国志」が流行っていた。全60巻を持っている友達の家に集まって回し読みすることが楽しみだった。そんなこともあり、息子の12歳の誕生日に「三国志」全巻セットをプレゼントした。案の定、息子はハマり、親子の会話のネタに三國志の話が加わった。
漫画の延長で、息子が持ち始めたスマホに三国志のシミュレーションゲームをインストールして、一緒にスマホゲームで遊んでいた時期がある。そのゲームは陣取りゲームで、自分が一国一城の主となり、武将を集めて、他の城を制圧していくことが目的のオンラインゲームである。国内中心に何千何万という人が同時にプレイしている。
そのゲームの楽しみ方の一つが、他のプレイヤーと同盟を組み、他の同盟と合戦をすることである。同盟のリーダーがその合戦の音頭を取り、メンバーに指示を出してくる。その指示は私にも届き、「◯月×日△時に敵を襲撃します。このメッセージに返事をしない人、襲撃に参加しない人は同盟から追放します」というようなメッセージが毎週のように届く。最初の頃は「参加できません」と返事をしたり、うまく時間が取れれば参加したこともあったが、かなり早い段階から、なんで仕事で毎日いろんなタスクをこなしているのに、ゲームの中でもタスクを求められるのか、と面倒になり、早々にゲームから撤退した。
近年、地縁関係や属性によるコミュニティの紐帯が希薄になってきているが、その一方でファンダムといわれる、「推し活」や「趣味」のコミュニティの結びつきに注目が集まっている。インターネットを活用して、情報を交換したり、交流するものが多く、オンラインゲームのコミュニティやアイドルのファンコミュニティなどかなり大きなものもある。それらのコミュニティには、自分の意思で参加するため、自治会や労働組合のような半強制的な参加に比べて自由意志が反映される参加であり、風通しの良いものと思っていた。しかし、私のオンラインゲームコミュニティがそうであったように、ファンダムにもルールやしきたりがあり、そのルールを守れない人は追放されたり、利益を享受できなくなる。三国志のゲームの場合、同盟の指示に従わなければ追放されてしまい、そのゲームを攻略すること自体が困難になってしまう。アイドルファンであれば、コンサートの声出しのルールなどがある。
私は以前から、希薄になりがちなコミュニティの紐帯を維持するためには「半強制的な仕組み」をうまく使いこなす必要があると述べてきた。自治会に加入して年会費を支払うことは、加入しないという選択肢を選ぶことができるという点で、強制ではなく、半強制的なものである。しかし、ただ年会費を支払っているだけで、その意義を感じられない人が増えた結果、全国的に自治会加入率の低下が進んでいる。半強制的な仕組みを成立させるためには、メンバーが意義を感じられるような工夫が求められる。
ファンダムは「何かを好き」という気持ちを軸に人が集まるため、半強制的な仕組みは不要と思っていたが、ファンダムにも、秩序を維持しコミュニティの利益を皆が享受するための半強制的な仕組みがやはり求められる。このことは、利益を享受するだけのフリーライダーだけではコミュニティが成立しないことを意味し、また同時に、地縁組織など従来のコミュニティにも、半強制の仕組みを見直すことで再生する可能性があることが示唆される。
※掲載原稿と若干変更する場合があります。
